経鼻的内視鏡手術(内視鏡下経鼻頭蓋底手術を含む)

当院は日本間脳下垂体外科学会の手術見学実習可能施設にも認定されている全国的にもトップレベルの施設です。当院では2010年より脳外科-耳鼻科医師が合同で内視鏡手術を行うFour-handテクニックを用いた内視鏡単独経鼻手術を導入し、2022年までに約800例の手術を行ってきました。
経鼻内視鏡手術が適応となる疾患の多くは間脳下垂体腫瘍になりますが、この疾患は内分泌機能障害(ホルモン分泌異常)、視力・視野障害、鼻出血・髄液鼻漏など、症状は多岐にわたり、子供から成人、ご高齢の方までどの年代にも発生する病気のため、診断・治療には脳神経外科のみならず内分泌代謝内科、眼科、耳鼻科、小児科、産婦人科等、多くの診療科と連携を取りながら密に治療戦略を立てていくことが重要です。当院では大学病院の特色を生かしながら、診療科の垣根を越えた患者毎にそれぞれ必要な検査や治療を、それぞれの専門家が行う事で質の高い医療を提供することを心掛けております。もちろん脳神経外科内には多くの神経内視鏡学会技術認定医が在籍し、複数の日本内分泌学会認定内分泌代謝 (脳神経外科) 専門医が所属しております。

これまでは開頭術でしか対応できなかった鞍結節髄膜腫、頭蓋咽頭腫、脊索腫といった頭蓋底腫瘍にたいしても、内視鏡下拡大経蝶形骨洞手術(内視鏡下経鼻頭蓋底手術)を行う事で、鼻から脳腫瘍を摘出することが可能になりました。経鼻内視鏡手術では、腫瘍の摘出の際に脳の隙間を分ける操作が不要で、多くの場合に脳に直接触れずに腫瘍を摘出することが可能で、患者さんにとってはより負担の少ない手術を提供することが可能になりました。この方法は経験のある施設でないと困難な手技ですが、当院では年間約20件程度(経鼻内視鏡手術の3割程度)の拡大蝶形骨洞手術を実施しており、全国的にもトップレベルの豊富な経験数を有します。
これら経鼻内視鏡手術を支える手術支援として当院では術中視機能温存を目的とした神経モニタリング装置やナビゲーションシステムを使用し、当院の特色の一つである術中MRI撮像装置も、大型でリスクが高い症例については積極的に使用しながら安全で確実な手術の遂行を心掛けております。
治療方針で悩まれている場合はお気軽にご相談ください。

経鼻内視鏡手術:鼻の孔から直径4mmの内視鏡を挿入し、手術を行います。脳の底面にできる腫瘍については鼻腔側から腫瘍を直接摘出することで脳に触れずに腫瘍を摘出できるため、適切に症例を選択することでより安全で確実に腫瘍の摘出が可能となります。

 

経鼻内視鏡チーム:経鼻内視鏡手術は鼻腔内の構造物の知識と術後の鼻腔内の環境管理が必要になります。当院耳鼻咽喉科の医師の協力のもと、科の垣根を越えた経鼻内視鏡チームとして手術を行っています。

 

NFPA:非機能性下垂体腺腫の患者さんに対して経鼻内視鏡手術を行い全摘出できた症例です。左の画像で黄色の点線部が腫瘍となりますが術後消失し正常な下垂体のみ温存されています。術前認められた視神経への圧迫も解除され、10日間程度の入院で退院となりました。

 

鞍結節部髄膜腫:鞍結節部という脳の底面にできる良性の脳腫瘍に対して経鼻内視鏡手術を行い腫瘍が摘出された症例です。術前認められた視力や視野の障害も改善し、認知機能も回復できました。

 

頭蓋咽頭腫:小児と成人どちらにもできてしまう間脳下垂体部腫瘍です。症例によって選択が必要になりますが経鼻内視鏡手術ですべての腫瘍が摘出できた症例になります。繰り返し再発を起こすことが知られている病気ですが、経鼻内視鏡手術は繰り返し行うことが可能で残念ながら複数回の手術が必要となった場合でも対応できることが多いです。

(文責:木野 弘善)

 
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