神経膠腫

神経膠腫は、組織型から星細胞腫系(膠芽腫を含む)の腫瘍と乏突起膠腫系の腫瘍に分けることができます。また悪性度(WHO分類)でCNSグレード1-4に分類されており,一般的にはグレード1は良性、2は低悪性、3-4は悪性とされていますが、実際にはグレード2のものでも長期間経過後に3-4に悪性転化する例もあり、根治が難しいケースもあります。よって、全身状態や部位などの関係で困難な例を除き、最初の手術で可及的に摘出を行うことが大切で、術後にはグレード3-4のものでは放射線化学療法を、2のものでも注意深い経過観察もしくは追加の治療が必要となります。

当院では、手術に際しては、特に運動野や言語野近傍においては、障害をおこさずに可及的に摘出を進めるために、術中機能的ナビゲーション(※)、術中電気生理学的脳神経機能モニター(※)に加え(図1)、必要に応じて覚醒下手術を行っています(図2)。また、術中蛍光診断(※)を行い、腫瘍を残さないように細心の注意を払っています。特に、グレード2以上の神経膠腫の再発率や予後改善のためには十分な腫瘍摘出が必要となるため、術中MRIを大いに活用しています。(図3)  

また、当院では放射線においても通常のX線分割照射に加え、陽子線(※)、中性子捕捉療法(※)など最先端の放射線が行えます。特にグレード4の膠芽腫に対しては、通常の放射線化学療法では治療が難しく、可及的摘出に加えワクチン療法(※)などの免疫療法の治験や臨床研究用薬剤を用いた特殊治療など最先端の集学的治療に積極的に取り組んでおります。

グリオーマの診断については、通常の病理診断に加え、関西中枢神経腫瘍分子診断ネットワークに参加しMGMT薬剤耐性遺伝子のメチル化の有無やIDH1変異などの分子診断を行っております。現在は、特殊治療が行える適応症例については積極的に治験や臨床試験に参加していただき、該当しない症例においても遺伝子診断に基づいた個別化治療のプロトコールにより、現在の治療薬において最良と思われる組み合わせの後治療を提案しております。

筑波大学脳神経外科_対象疾患_神経膠腫

▲図1 一次運動野近傍の神経膠腫の患者さん。
A頭部MRI
B-D術中写真
(B:摘出前、C:超音波吸引器を用いた腫瘍摘出、D白質刺激による摘出腔と錐体路との距離の確認)

筑波大学脳神経外科_対象疾患_神経膠腫
▲図2 ひだり頭頂葉の膠芽腫の患者さんの覚醒下手術による肉眼的全摘出例(左:術前、右:術後)
筑波大学脳神経外科_対象疾患_神経膠腫

▲図3 膠芽腫における術中MRIによる手術摘出率の向上。
青部は肉眼的全摘出(GTR)率で赤部は亜全摘出(STR)率。Ishikawa E, et al. BMC Neurol. 2021より改変

(文責:石川 栄一)

 
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