小児脳神経外科(脳腫瘍)
こどもの脳や脊髄に起こる病気は種類も様々で治療法はそれぞれ異なります。小児脳神経外科では、病気ごとの脳神経外科の専門のチームや小児科をはじめとする院内の他の診療科や多職種と協力して診療を行っています。 こどもは小さな大人ではありません。病気そのものをどう治療するかだけでなく、未完成なこどもの脳や体に対する成長や発達への影響を考えて治療方針を決定する必要があるところが小児脳神経外科の大きな特徴です。多くの場合治療後も成長に伴う問題がないかを観察していきます。
※脳神経外科手術後の通園・通学や運動について
術後いつから通園・通学していいか、運動していいのかについては決まったガイドラインはありません。手術後に化学療法などが必要となる脳腫瘍などを除けば、だいたい術後1週間くらいで退院することが多いです。術後は体力が落ちていることが多いのでまずは自宅での日常生活で慣らしてから短時間から通園・通学を開始することをお勧めしています。運動については手術の種類にもよりますが、通常の学校生活を送れるようになって1-3か月してから開始することが多いです。手術した部位をぶつけることが多いようなスポーツはしばらく避けたほうがいいです。運動できないデメリットも考慮して個々に相談しています。
脳腫瘍
こどもの脳や脊髄にできる腫瘍にはたくさんの種類があります。腫瘍のできる場所によって症状は様々ですが、こどもの脳腫瘍には正中や後頭蓋窩という脳幹や小脳の近くにできやすく、水頭症を合併しやすいという特徴があります。脳腫瘍の治療は手術、化学療法(抗がん剤などの薬物による治療)、放射線治療を組み合わせて行いますが、治療の方針は小児科や放射線腫瘍科などと相談して決めます。。通常手術は治療のゴールではなく、治療における最初のステップです。脳神経外科はこの最初のステップで関わることが多いです。手術後は腫瘍によって化学療法や放射線治療などの追加治療が必要となりますが、化学療法は小児科、放射線治療は放射線腫瘍科とそれぞれの専門家が担当することになります。
症状
症状は腫瘍のできる部位や腫瘍の大きさなどによって異なります。急激に悪化することもあれば数ヶ月から数年かけて症状が進行することもあります。
起こりやすい症状:頭痛、嘔吐、けいれん、視力低下、ものが二つに見える(目の位置がおかしい)、うまく歩けない、手足の動きが悪い、学校の成績が落ちる、寝ていることが多いなど
診断
目の動きや歩き方などを診察します。必要と診断した場合CTやMRIなどの脳の画像検査を行います。血液検査などで診断できるのはごく一部の腫瘍に限定されています。MRIなどの画像検査だけで細かい種類までは確定できないこともあるため基本的には組織診断が必要です。
治療
手術:手術は脳腫瘍治療の最初のステップとなります。水頭症を合併している場合、最初に水頭症の治療をしてから腫瘍の手術を行うこともあります。原則的には可能な限り腫瘍を摘出します。神経機能を温存するため、腫瘍の位置を同定するナビゲーションや手術中に神経生理学的モニタリングという顔面や手足の運動機能、膀胱機能などを確認する検査を用います。また筑波大学附属病院には手術室にMRIがあります。脳腫瘍の摘出の確認は術翌日のMRIで確認しますが、術中にMRIを撮影することにより残存腫瘍に対する追加で摘出することができます。これら様々な方法を用いることで安全で最大限の腫瘍摘出を目指します。
小児の脳腫瘍の中には化学療法や放射線がよく効くタイプもありますので、その場合は摘出を行わずに治療を開始することもあります。化学療法は主に小児科、放射線治療は放射線腫瘍科が担当します。
小児脳腫瘍の放射線治療に陽子線を選択することがあります。陽子線は放射線の一つで周囲の正常組織への影響を少なくできるという特徴があります。成長途中の小児の脳組織は放射線照射によりダメージを受けます。陽子線はこのダメージを最小限にできるため、特に小児脳腫瘍の治療に適しています。筑波大学附属病院の陽子線治療センターは国内で最も長い歴史がありこれまでにも多数の患者さんを治療しています。
入院中は症状に応じてリハビリテーションを行ったり、院内学級に通うなど生活全般に渡ってケアを行います。
フォローアップ
治療が終了しても、再発や治療による合併症が出現しないかを注意して見ていく必要があります。定期的にMRIなどの画像検査を行ったり、年齢に応じて成長や全身状態のチェックを行います。