小脳橋角部腫瘍

小脳と橋(脳幹の一部)の近傍には、聴神経腫瘍を含めた神経鞘腫や髄膜腫、類上皮腫などの腫瘍が発生し、これらをまとめて小脳橋角部腫瘍と呼んでいます。小脳橋角部腫瘍の手術においては、脳神経の機能をいかに温存するかということがとても重要になってきます。
当院では、各種の電気生理学的脳神経機能モニタリングを行いながら、脳神経機能の最大限の温存を図ったうえで、可能なかぎり腫瘍を減らす(可能であれば全摘出を目指し、困難であれば亜全摘出を行う)という方針のもとに手術を行っています。症状に乏しく腫瘍サイズの小さなものに対しては定期的画像評価による経過観察を行っていく方針も提示しており、ご年配の患者さんの小~中型聴神経腫瘍に対しては放射線治療の選択肢もご説明しています。

■ 聴神経腫瘍に対しては、術中に持続顔面神経モニタリングや(聴力が保たれている患者さんには)聴性脳幹反応モニタリングを行うことで、顔面神経機能や聴力を最大限に温存する手術を行っています。

(代表例)
すでに聴力が消失している巨大嚢胞性聴神経腫瘍に対して、持続顔面神経モニタリングのもとに腫瘍摘出を行い、術後は顔面神経麻痺なく経過されました。

 

■ 錐体部髄膜腫に対しては、腫瘍に接している各種脳神経に対する術中機能モニタリングを行うとともに、血流に富む腫瘍に対しては術前腫瘍血管塞栓術(血管内治療)により術中出血をおさえた手術を行っています。

(代表例)
歩行時ふらつきで発症した巨大錐体部髄膜腫に対して、腫瘍血管塞栓術を行ったのちに、顔面神経モニタリングおよび聴性脳幹反応モニタリングのもとに腫瘍を全摘出しました。

■ 類上皮腫に対しては、腫瘍に巻き込まれている各種脳神経モニタリングを行うことで、様々な脳神経機能の最大限温存を図っています。

(代表例)
顔面痛で発症した小脳橋角部類上皮腫に対して、各種脳神経モニタリングのもとに腫瘍摘出を行い、術後は合併症なく経過されました。

(文責:松田 真秀)

 
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