頭蓋底腫瘍

頭蓋底部に発生する腫瘍は、手術での到達が困難であることや周囲に重要な脳神経や血管が存在していることから、脳神経外科で扱う疾患のなかで最も治療難易度の高い病変であると言えます。当院ではあらゆる部位の頭蓋底腫瘍に対して、手術や放射線治療を含めた治療体制を整えておりますので、他院での治療が困難であると説明された方も含めてご相談に応じることが可能です。頭蓋底腫瘍のうち下垂体近傍病変や前頭蓋底病変の一部は、より侵襲(体への負担)の低い経鼻内視鏡手術を導入しておりますので、経鼻内視鏡手術の項目をご覧下さい。
その他の頭蓋底部に発生した腫瘍に対しては、開頭頭蓋底手術を行っています。
頭蓋内の深部に到達するにあたって、頭蓋底部の骨を削除して操作空間を広げることで、脳の圧排を最小限にする手術方法です。脳神経が巻き込まれていることも少なくないため、それらの機能を最大限に温存する目的で、各種の電気生理学的脳神経機能モニタリングを行いながら腫瘍の摘出を行っています。
頭蓋内のみでなく、顔面や頸部にまで進展しているような腫瘍に対しては、耳鼻咽喉科や形成外科との合同手術を行うことで、より根治を目指した手術を行っています。重要な脳神経、血管や脳幹などと強固に癒着しているような腫瘍に対しては、それらの損傷を避けるために腫瘍の一部を残した手術を行い、残存腫瘍に対して追加の放射線治療を組み合わせる集学的治療法を行っています。
また、血流に富む腫瘍に対しては、術中の出血を減らすことを目的として腫瘍血管の塞栓術(血管内治療)を行うことで、より質の高い手術を提供しています。
以下に当院で実際に治療を行った頭蓋底腫瘍の代表例をご紹介します。

➤ 嗅窩髄膜腫

物忘れで発症した巨大前頭蓋底髄膜腫を、腫瘍血管塞栓術を行ったのちに全摘出しました。

 

➤ 前床突起髄膜腫

失語症と動眼神経麻痺で発症した前床突起髄膜腫に対して、Dolencのアプローチでの摘出を行いました。

 

➤ 頭蓋顔面髄膜腫

これまでに2回の摘出術と1回の放射線治療を行われている髄膜腫の再々発に対して、耳鼻咽喉科との合同手術を行い、頭蓋内と顔面の腫瘍を摘出しました。

 

➤ 錐体斜台部髄膜腫

頭痛精査で指摘された錐体斜台部髄膜腫に対して、合併経錐体アプローチによる腫瘍全摘出を行いました。

 

➤ 大孔髄膜腫

著明な脳幹圧排をきたしている大孔髄膜腫に対して、腫瘍血管塞栓術を行ったのちに、経後頭顆アプローチを用いて腫瘍を全摘出しました。

 

➤ 舌下神経鞘腫

舌偏位、嗄声、左下肢不全麻痺で発症した神経鞘腫に対して、術中モニタリングのもとに、外側後頭下開頭+乳突削開を行って腫瘍を摘出しました。
術後は嚥下障害の合併なく経過されました。

(文責:松田 真秀)

 
PAGE TOP