小児脳神経外科(二分脊椎)

二分脊椎とは脊椎がうまく形成されない先天奇形の一種です。代表的な病気は脊髄髄膜瘤と呼ばれる生まれたときに神経が皮膚で覆われていない病気です。脊髄髄膜瘤以外にも二分脊椎と呼ばれる病気には様々な形態があります。

こどもの脳や脊髄に起こる病気は種類も様々で治療法はそれぞれ異なります。小児脳神経外科では、病気ごとの脳神経外科の専門のチームや小児科をはじめとする院内の他の診療科や多職種と協力して診療を行っています。 こどもは小さな大人ではありません。病気そのものをどう治療するかだけでなく、未完成なこどもの脳や体に対する成長や発達への影響を考えて治療方針を決定する必要があるところが小児脳神経外科の大きな特徴です。多くの場合治療後も成長に伴う問題がないかを観察していきます。

※脳神経外科手術後の通園・通学や運動について 術後いつから通園・通学していいか、運動していいのかについては決まったガイドラインはありません。手術後に化学療法などが必要となる脳腫瘍などを除けば、だいたい術後1週間くらいで退院することが多いです。術後は体力が落ちていることが多いのでまずは自宅での日常生活で慣らしてから短時間から通園・通学を開始することをお勧めしています。運動については手術の種類にもよりますが、通常の学校生活を送れるようになって1-3か月してから開始することが多いです。手術した部位をぶつけることが多いようなスポーツはしばらく避けたほうがいいです。運動できないデメリットも考慮して個々に相談しています。

 

脊髄髄膜瘤

脊髄髄膜瘤は出生前に診断されることもあります。診断時期によらず、出生後48時間以内に皮膚で覆われていない脊髄を皮膚で覆う手術(閉鎖術、修復術といわれます)を受ける必要があります。脊髄髄膜瘤には水頭症やキアリ奇形を合併することがあるため、必要に応じてそれらの治療も行います。

 症状

下肢の症状:運動障害、感覚障害、変形などが起こります。車椅子や装具などが必要になることもあります。感覚障害があるため褥瘡などになることもあり注意が必要です。
排尿・排便の症状:多くの場合排尿や排便の症状(失禁など)を合併します。
水頭症による症状:頭が大きい、大泉門が大きく開いており膨隆しているなど→水頭症の項を御覧ください
キアリ奇形による症状:キアリ奇形は小脳や脳幹の位置が通常より下がるため圧迫されて無呼吸発作などの呼吸障害を起こすことがあります。その他、嚥下障害(飲み込みがうまくできない)をきたすこともあります。

 治療

脊髄髄膜瘤と診断された赤ちゃんはNICUに入院します。まず生まれて48時間以内に脊髄髄膜瘤の修復術を行います。生まれた時点で水頭症が明らかであれば、同時に治療することもあります。約70%が水頭症に対して脳室腹腔シャント術が必要となると言われています。ほとんどの場合キアリ奇形を合併しますが、呼吸の症状が出現するのはそのうち10%ほどです。症状がある場合は脳幹の圧迫を解除する手術が必要となります。

 フォローアップ

生まれて1か月くらいで退院できることが多いですが、呼吸の症状などがあると入院が長くなることもあります。手術して治療は終了ではなく、小児科、整形外科、小児外科、泌尿器科、リハビリテーション科などと共に、成長発達や足や排尿などの様々な症状についても適切な治療を行う必要があります。

脊髄髄膜瘤以外の二分脊椎=潜在性二分脊椎

同じ二分脊椎ですが、皮膚が閉鎖しているタイプの二分脊椎を潜在性二分脊椎と呼びます。皮膚で覆われていますが、皮膚陥凹(dimple)やあざ、やわらかい脂肪腫などの皮膚の異常がお尻の上あたりに見られることが多く、MRIを撮影すると脊髄の異常が発見されることがあります。脊髄の異常は様々で、脂肪のかたまりが脊髄に付着している脊髄脂肪腫の他、終糸と言われる紐状の構造物が肥厚して脊髄を牽引することもあります。起こる症状は下肢の症状、排尿・排便の症状と脊髄髄膜瘤と共通していますが、水頭症やキアリ奇形を合併することは稀です。潜在性二分脊椎と診断したら、排尿の症状がないか検査を行います。症状がある場合は脊髄の圧迫や牽引を解除する必要があります。症状がない場合でもその後に症状が出現するのを予防するために手術を行うことがあります。

(文責:室井 愛)

 
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