小児脳神経外科(もやもや病)

こどもの脳や脊髄に起こる病気は種類も様々で治療法はそれぞれ異なります。小児脳神経外科では、病気ごとの脳神経外科の専門のチームや小児科をはじめとする院内の他の診療科や多職種と協力して診療を行っています。 こどもは小さな大人ではありません。病気そのものをどう治療するかだけでなく、未完成なこどもの脳や体に対する成長や発達への影響を考えて治療方針を決定する必要があるところが小児脳神経外科の大きな特徴です。多くの場合治療後も成長に伴う問題がないかを観察していきます。

※脳神経外科手術後の通園・通学や運動について
術後いつから通園・通学していいか、運動していいのかについては決まったガイドラインはありません。手術後に化学療法などが必要となる脳腫瘍などを除けば、だいたい術後1週間くらいで退院することが多いです。術後は体力が落ちていることが多いのでまずは自宅での日常生活で慣らしてから短時間から通園・通学を開始することをお勧めしています。運動については手術の種類にもよりますが、通常の学校生活を送れるようになって1-3か月してから開始することが多いです。手術した部位をぶつけることが多いようなスポーツはしばらく避けたほうがいいです。運動できないデメリットも考慮して個々に相談しています。

もやもや病

脳は全身で最もたくさんの血液を必要とする組織です。脳に血液を送る血管は大きく4本ありますが、もやもや病はこれらの太い血管(主管動脈)が進行性に細くなる病気です。主管動脈が細くなると脳にうまく血液が送られなくなり、血液が不足した部分の脳がうまく働かなくなります。血液が不足することを虚血といいます。例えば右側の脳の血流が不十分となると左手足に力が入りにくくなります。完全に閉塞しているわけではないため症状は一時的で元に戻ることが多いですが、長時間血流が不足すると脳梗塞になります。また、主管動脈が細くなる代わりにもともと細い血管が太くなって不足した血流を補おうとします。これにより血管に負荷がかかって出血を起こすことがあります。こどもでは虚血、大人では出血で発症することが多く、症状がある場合手術による治療が必要です。症状がなくてもこどもでは手術を行うことが多いです。

 症状

一時的に手足に力が入りにくい、手足のしびれ、言葉がうまく出なくなるなどの症状が出現します。熱いものを冷ます、麺をすする、大泣きする、息が切れるような運動をする、リコーダーやピアニカを吹く、大きな声で歌うなどの、いわゆる過呼吸の後に症状が出現することが典型的と言われています。多くの場合は数分から30分くらいでこれらの症状が消えます。
頭痛ももやもや病に多く見られる症状です。

 診断

MRIで主管動脈の狭窄や脳梗塞などができていないかを評価します。MRIで診断が確定したら脳血管造影や脳血流評価(核医学の検査)を行いさらに詳しく調べます。
血のつながった家族にもやもや病の人がいる場合、症状がなくても検査をおすすめすることがあります。

 治療

もやもや病の進行に伴い虚血や出血などが起こりやすくなるため、虚血を予防するために手術を行います。もやもや病に対する手術には大きく分けて2種類あります。血流が不足している部位の血管に頭皮の血管を直接つなぐ直接バイパス手術と、頭皮の血管と血流豊富な組織を脳表に広く接着させて血管新生を促す間接バイパス手術です。筑波大学附属病院では小児のもやもや病に対して間接バイパス手術を行っています。
もやもや病の手術では、手術中だけでなく術前後に血流が不足しないように注意が必要です。手術中は麻酔科、術後は小児集中治療室の小児科医師などと協力してきめ細かく管理しています。

 フォローアップ

もやもや病は最初は一側のみのことも多いですが、多くの場合両側性です。一側の手術を行った後ももう一側の進行を見ていく必要があります。また術後に虚血が進行して脳梗塞になったり出血を起こすことがありますので、手術した場合でも長期に渡って通院して定期的に画像検査を行う必要があります。
もやもや病の患者さんでは頭痛がある人も多く、治療後も頭痛が続くことがあります。頭痛に対しては頭痛のタイプに応じた治療が必要ですが、もやもや病では使用する薬剤に注意が必要です。

(文責:室井 愛)

 
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